announce office_guide topic faq 事務所雑感
事務所案内
不動産登記
法人登記
会社法務
法人登記
裁判
成年後見制度
家事事件
その他

事務所雑感


国宝 三井寺展

 サントリー美術館に「国宝 三井寺展」を見に行ってきました。六本木は、当事務所のある池袋方面から一番行きづらいところなので、いつもおっくうになる気持ちがあるのですが、今回は行って良かったです。「妙心寺展」よりずっと良い。1300円出す価値ありました。
 案内文には、2008年(平成20)は、三井寺の中興の祖、智証大師円珍が密教の真髄をたずさえ唐より帰朝されて1150年、また狩野永徳の長男で三井寺の勧学院(かんがくいん)に華麗な障壁画を残した狩野光信の没後400年にあたり、これを記念しての特別展で、国宝・重要文化財約60件を含むおよそ180件を公開します。とありますが、なんと言っても、秘仏7体をいっきに見せてしまって良いのでしょうか。三井寺の偉い僧侶でも、特別な時でない限り滅多に見ることができないと言います。大概のお寺は、何年かに一度「ご開帳」をして寺に人を集めたりするか、展覧会があっても、もったいぶってなかなか見せて下さいません。それに比して三井寺はなんと心が広いのでしょう。ありがたく、感謝です。
 お寺の仏像は信仰の対象なので、ろうそく・線香の煙で日々すすけていきます。よく拝まれた仏様ほど黒くなり、これは「信仰焼け」といって、それだけ拝まれたありがたい仏様である証拠なのですが、いつも「ちょっと残念」と思っていました。特に密教系は顔前で護摩を焚くので、もっともっと黒くなります。そして今回の仏像です。
 秘仏中の秘仏ですから、みんなとてもきれいな状態でおられます。特に不動明王(黄不動尊)は、彩色が美しいのは勿論、肌につやがあって、背中の部分などは弾力すら感じられ、これ本当に木造ですか、と思ったくらいでした。今私たちが見ることができる仏像は、作られてから随分と時代が付いているものですが、生まれたての仏像を見た人々は、さぞ畏怖の念に打たれたことでしょう。
 国宝指定をされているものは、占める割合として実は古文書、経文、手紙等の「書」が多いんですね。こちらは、まず書いていあることがよくわからないし、ビジュアル的でないのでいつもサラッと通り過ぎるくらいなのですが、今回は興味を引かれたものがありました。智証大師円珍の俗世の時の家系図だそうで、どう見てもこれは走り書きメモです。現存する最古のものという歴史的な価値もあり、国宝なのですが、これは珍しいと思いました。
 
 工芸も優品揃い、また曼荼羅も、普段よく目にする、茶色くなった幾何学曼荼羅ではなく、赤と緑の色が妖しくも美しい尊勝曼荼羅等、具象曼荼羅が沢山あって、曼荼羅にはこんなに楽しい世界があったのかと新発見をしました。
 三井寺の仏像は、「如来」「菩薩」は小ぶりで、とり澄ましていない造形をとっており、また「愛嬌のある不動明王」をはじめ「格好の良い毘沙門天」、「清楚な吉祥天」等庶民にとって具体的で親しみやすいものも多く、この中の一体でも持っているお寺があったら、それだけで大変なお宝を持ったお寺ということになるような仏像ばかりでした。特に、訶梨帝母倚像(鬼子母神)は、人間的な姿を写しながらも、俗世を超越した慈愛の表情にしばし見入りました。加えて円空仏(琵琶湖つながりの善女竜王立像)まであり、嬉しくなりました。
   
 終美を飾るのが「如意輪観音菩薩坐像」です。「官能的」と形容されることの多い如意輪観音ですが、こちらの如意輪観音はいやらしくありません。「如意輪観音はだだ瞑想しているだけなのに、あまりに魅惑的なので、見ている方が勝手に、ここは何処、私は誰、つらい現世から、あなたのいる夢のような世界へ、入って行ってしまいたい」とつい引き込まれそうな気持ちにさせられます。ほんわりなまめかしく美しく、腕のむっちりしたところ、たおやかな指先など、たまりません。冠もゴージャス。こちらも33年に1度しか見られない秘仏。いかがですか?画像は情報でしかないので、残念ですが、やはり仏像はライブを見ないと良さが実感できないかもしれませんね。
 次に今回展示の2番目のハイライトである、狩野光信の障壁画も好感の持てる優品です。前に狩野派について書きましたが、光信は自分のできる仕事をきっちり誠実にこなして、探幽に繋いでいった立派な方だと思いました。
 「この方は、岩は永徳ばりに上手で、草・花を優美に描くのが得意なのだな。空間処理も良いのだと思う。だけど、松も草みたいで、引っ張ったらすぐに抜けてしまいそうだな」などと思いながら鑑賞するのも、また素人の楽しみです。狩野光信関連ということで、高台寺から、よくテレビなどで見ることのある「豊臣秀吉像」「高台院(ねね)像」が来ていて、顧客満足が行き届いております。
 上記以外にも、三井寺は近江八景の「三井の晩鐘」で有名なので、名所旧跡として描かれた「名所図屏風」「広重の浮世絵」あり、三井寺と縁の深かった「フェノロサ」関係の品々ありで盛りだくさんでした。 
 これだけ多種の展示品があると、大概「何でも持ってくれば良いってものでは無いでしょう」となりがちなところ、良いものが沢山あったのに感心しました。三井寺は以前に一度行ったことがあるのですが、素朴な印象で、お寺の建物からはこんなお宝を持っていたとは知りませんでした。お寺としては自らを「不死鳥の寺」と言っています。古都の名刹ではない分、苦難をくぐり抜ける中、西国三十三所観音霊場としての側面も持って、庶民の信仰心に添うお寺として存在し、現在があるのではないかと感じました。
 お薦め度 仏像好きには☆☆☆☆
 この展覧会は3月15日で終了し、巡回先は福岡市博物館:平成2141日〜510日 です。
ほか主要な展示品は下記ブロガーさん、及びサントリー美術館ホームページを参考にして下さい。
 いつづやの文化記号http://izucul.cocolog-nifty.com/balance/2009/02/index.html
 弐代目青い日記帳 http://bluediary2.jugem.jp/?eid=1660
 サントリー美術館 http://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/09vol01/index.html

    

 
copyright